離婚するための手続としては、主に、①協議離婚、②調停離婚、③訴訟離婚(和解離婚)があります。
①協議離婚は、離婚について夫婦が話合いによって決定するものです。
②調停離婚は、家庭裁判所の調停手続を利用して、調停委員(会)の関与のもとで離婚について夫婦が話し合って決定するものです。
③訴訟離婚は、家庭裁判所の訴訟手続を利用して、離婚について家庭裁判所に決定してもらうものです。
①協議離婚と②調停離婚との割合は、①協議離婚が約88%、②調停離婚が約8%となっています(令和4年度の離婚に関する統計の概況)。
それぞれにメリット・デメリットがありますが、手続の簡便さ、費用の大小、解決までの期間の長短という点でいえば、基本的には、協議離婚、調停離婚、訴訟離婚の順になります。ただし、協議離婚でも解決までに時間がかかってしまうことはありますので、早期に調停離婚・訴訟離婚を試みた方が早く解決できるという場合もあり得ます。
公正な解決の可能性という点でいえば、訴訟離婚、調停離婚、協議離婚の順になります。
では、それぞれのメリット・デメリットについて詳しく解説していきます。
(1) メリット
協議離婚は、離婚について夫婦が話し合いによって決定するものですので、特別な手続は必要ありません。いつでもどこでも話し合うことができます。
また、費用がほとんどかからないこともメリットです。
ただし、弁護士を離婚協議の代理人とする場合には弁護士費用がかかりますし、離婚協議での約束事(養育費や慰謝料、財産分与などの合意)を公正証書にする場合には公正証書の作成費用がかかります。
(2) デメリット
相手が話し合いに応じなかったり、応じたとしても、感情的な話合いになってしまったり、法的な観点が度外視されてしまったりするおそれがあります。
また、養育費などのお金の支払を協議して約束したのに破られてしまった場合に、約束を守ってもらうには調停や訴訟をすることが必要になります。ただし、約束を公正証書(強制執行認諾条項付き)にしておけば調停や訴訟をしなくて済みます。
(1) メリット
調停離婚は、家庭裁判所の調停手続を利用して、調停委員(会)の関与のもとで離婚について夫婦が話し合って決定するものですので、調停委員(会)の関与によって公正な解決に至ることが期待できます。
調停手続での話合いは、夫婦が交代で調停委員と話をします。片方が調停委員と話をしている間は、他方は待合室で待機しますので、基本的には直接顔を合わせなくて済みます。また、調停委員という第三者が関与しますので、感情的にならず理性的に話をできることが期待できますし、法的観点も重視されます。
また、調停手続は、書面ではなく口頭での説明を中心として進めることが可能です。そのため弁護士をつける必要性は訴訟と比べれば小さいといえます。
調停が成立した場合には、裁判所が調停調書を作成し、養育費などのお金の支払を約束すれば、それを調停調書に記載します。もし、その約束が破られた場合には、訴訟をせずに、調停調書に基づいて約束を守らせること(相手の財産を差し押さえることなど)ができます。
(2) デメリット
調停離婚は家庭裁判所の調停手続を利用して行うものですので、調停申立書の提出などの申立手続が必要になります。また、申立ての際には、家庭裁判所の手数料(令和6年現在1,200円)と予め納付する郵便切手の代金(裁判所によって異なりますが1,000円前後)がかかります(弁護士を離婚調停の代理人とする場合にはこれらとは別に弁護士費用がかかります)。
また、指定された調停期日に家庭裁判所で話合いを行いますので、いつでもどこでも話し合いができるわけではありません。調停期日での話合いはおよそ1か月ごとに行われますので、終了までにかなりの期間がかかってしまうこともあります。
また、家庭裁判所が関与するとはいえ、あくまでも夫婦の話合いで決定するものですので、離婚の合意に達しない場合もあり、その場合には離婚は成立しません。
(1) メリット
裁判所が最終的には判決という形で離婚を認めるか否かを決定してくれます。
また、離婚訴訟の決着は必ずしも判決によるわけではなく、和解(話合いによる合意)によることも可能です。協議や調停では合意できなかった場合でも、裁判官が「判決ではこうなる見込みですよ」というようなことを伝えながら話合いを進めてくれることで合意に至ることが期待できます。
判決がされると、裁判所が判決書を作成し、判決で養育費などのお金の支払が命じられていれば、それは判決書に記載されます。もし、その命令が破られた場合には、判決書に基づいて命令に従わせること(相手の財産を差し押さえることなど)ができます。
和解が成立した場合には、裁判所が和解調書を作成し、養育費などのお金の支払を約束すれば、それを和解調書に記載します。もし、その約束が破られた場合には、和解調書に基づいて約束を守らせること(相手の財産を差し押さえることなど)ができます。
(2) デメリット
離婚訴訟を起こすには、原則として先に離婚調停を行う必要があります。
また、離婚訴訟を起こす場合には、裁判所の手数料がかかります。手数料の額は、離婚だけを請求する場合には13,000円(令和6年現在)ですが、離婚以外にも慰謝料や財産分与なども求める場合には増額されます。請求する金額が大きくなればなるほど手数料の額も大きくなります。また、予め裁判所に納める郵便切手の代金(5,000円程度)もかかります(弁護士を離婚訴訟の代理人とする場合にはこれらとは別に弁護士費用がかかります)。
さらに、離婚訴訟を起こすには訴状の提出が必要で、その後の訴訟の手続も、基本的には書面によって進められますので、書き方が分からない、何を書いたらいいのか分からない、という問題があります。そのため弁護士をつける必要性が離婚調停に比べて大きいといえます。
以上の解説をまとめますと、手続の簡便さ、費用の大小、解決までの期間の長短という点でいえば、基本的には、協議離婚、調停離婚、訴訟離婚の順になります。ただし、協議離婚でも解決までに時間がかかってしまうことはありますので、早期に調停離婚・訴訟離婚を試みた方が早く解決できるという場合もあり得ます。
公正な解決の可能性という点でいえば、訴訟離婚、調停離婚、協議離婚の順になります。
ケースに応じてどのような方法をとるのがよいかを検討する必要があります。
※2024(令和6年)11月11日時点の情報です。後の法律改正等には対応しておりません。