京都市中京区の小口淳也法律事務所のご案内です。

離婚に際して決めないといけないこと(その1)

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1.はじめに

 離婚するに際しては、離婚するということ以外も、いろいろと決めなければならないことがあります。

 決めなければならない主な事項は以下のようなものです。

(1) 離婚後の戸籍

 結婚した際に相手の戸籍に入籍した方が離婚した後に元の戸籍に戻るのか、新たな戸籍を作るのか

(2) 離婚後の氏

 結婚した際に相手の戸籍に入籍した方が離婚した後に元の氏に戻るのか、婚姻中の氏を使い続ける(婚氏続称をする)のか

(3) 子の戸籍や氏

 お子さんがいる場合にお子さんの戸籍や氏をそのままにしておくのか、離婚によって婚姻中の戸籍から離れる父又は母の戸籍に移すのか

(4) 離婚届の提出者

 離婚届をどちらが役所に提出するか

(5) 親権者・監護権者

 未成年のお子さんがいる場合に父母のどちらが親権者・監護権者となるのか

(6) 養育費

 未成熟のお子さんがいる場合に親権者・監護権者でない方が支払うお子さんの養育監護のための費用の支払額や支払方法

(7) 面会交流

 未成熟のお子さんがいる場合に親権者・監護権者でない方とお子さんとが会ったり連絡をしたりする頻度や方法

(8) 慰謝料

 離婚の原因が相手の不法行為(暴力、不貞など)である場合に離婚による精神的苦痛や相手の不法行為による損害を補填するために支払われる金銭の額や支払方法

(9) 財産分与

 婚姻中に夫婦の協働で築いた財産をどのように分けるか

(10) 年金分割

 婚姻期間中の厚生年金をどのような割合で分割するか

 では、今回は以上のうち(1)から(4)について詳しく解説していきます。

2.離婚後の戸籍

(1) 離婚後の戸籍は元の戸籍に戻るか新しい戸籍を作るかの二つから選択

 結婚した際に相手の戸籍に入籍した方は、離婚した場合、相手の戸籍から離れて、結婚前の元の戸籍(一般的には父母の戸籍)に戻るか、ご本人を筆頭者とする新たな戸籍を作ることになります。

 新たな戸籍を作りたい場合には役所に申し出る必要があり、申し出をしない場合には元の戸籍に戻ることになります。

 この新たな戸籍を作るという申し出は、離婚届の中にどちらの戸籍を選ぶかを記入する欄がありますので、どちらを選ぶかを記入した離婚届を提出することで行います。

 ちなみに、元の戸籍に載っていた人が全員亡くなられていたり他の戸籍に移ったりして元の戸籍がなくなっている場合には、新たな戸籍がつくられることになります。

(2) 離婚後の氏(姓)は元の氏に戻るか婚姻中の氏を使い続けるかの二つから選択

 元の戸籍に戻る場合には、元の氏(旧姓)に戻ることになります。これは同じ戸籍には同じ氏の人しか載せられないことになっているからです。

 これに対し、新たな戸籍を作る場合には、元の氏(旧姓)に戻ること(元の氏(旧姓)に戻って新たな戸籍を作ること)もできますし、婚姻中の氏を使い続けること(婚氏続称)も可能です。

 元の氏(旧姓)に戻る場合には、手続の必要はありませんが、婚姻中の氏を使い続ける(婚氏を続称する)場合には、離婚の日から3か月以内に本籍地又は住所地の市区役所・町村役場(以下「役所」といいます。)に「婚氏続称届出」を提出する必要があります。これには離婚した相手の許可は要りません。なお、期間を過ぎてしまうと、家庭裁判所に「氏の変更許可の申立て」をして許可を得ることが必要になります。

(3) 離婚後の戸籍を選ぶ際の考慮事項

 元の戸籍も戻るか新たな戸籍を作るか、元の氏(旧姓)に戻るか婚姻中の氏を使い続ける(婚氏を続称する)かを決める際には、いろいろなことを考える必要があります。

 元の戸籍に戻った場合には、何かの手続で戸籍をとる必要が生じたときに、簡単に同じ戸籍に入っているご家族に代わりにとってもらえるというメリットがありますが、元の氏(旧姓)に戻るので、周囲に離婚したことを知られたり、銀行口座の名義変更などの手続が必要になったりするというデメリットとがあります。

 さらに、同じく元の姓(旧姓)に戻る場合でも、新たな戸籍を作る場合には、新たな戸籍は元の戸籍とは別のものなので、元の戸籍に入っているご家族にご自分の戸籍を代わりにとってもらうことは簡単ではなくなってしまいます。

 これらの場合に対し、新たな戸籍を作って婚姻中の氏を使い続ける(婚氏を続称する)場合には、ご家族にご自分の戸籍を代わりに取ってもらうことは簡単ではなくなりますが、周囲に離婚したことが知られにくいですし、銀行口座の名義変更などの手続が不要というメリットがあります。

 また、新たな戸籍を作る場合には、元の氏(旧姓)に戻る場合でも婚姻中の氏を使い続ける(婚氏を続称する)場合でも、本籍地を自由に選べるというメリットもあります。

 そして、何よりも重要なのは、お子さんがいる場合に、お子さんの戸籍や氏をそのままにしておくのか、それとも離婚によって婚姻中の戸籍から離れる父又は母の戸籍に移すのかということです。

(4) お子さんを自分の戸籍に入れたい場合には新たな戸籍を作ることが必要

 離婚によって婚姻中の戸籍から離れられる方が、お子さんをご自分の離婚後の戸籍に入れたいという場合には、新たな戸籍を作る必要があります。なぜ新たな戸籍を作ることが必要かというと、戸籍には一組の夫婦とその子どもまでしか載せられないことになっているので、元のご両親の戸籍に戻ると、ご両親とご自身しか載せられず、お子さんは載せられないからです。

 また、お子さんを離婚後のご自身の戸籍に入れるには、まず、お子さんの住所地の家庭裁判所に対して、お子さんの氏についてご自身の氏と同じ氏に変更することの許可を申し立てる必要があります(「子の氏の変更許可の申立て」)。これが必要なのは、戸籍には同じ氏の人しか載せられないことになっているからです。

 ご自身が元の氏に戻った場合はお子さんと氏が違っているので「子の氏の変更許可の申立て」が必要になることはもちろんですが、婚姻中の氏(旧姓)を使い続けること(婚氏続称)にした場合も同様です。これは、婚氏続称による氏は、呼び方こそ離婚前と同じはであっても、離婚前の氏とは別の新たなものとされているからです。

 「子の氏の変更許可の申立て」をして変更許可を得たら、入籍届を役所に提出する必要があります。

(5) 離婚届をどちらが役所に提出するか

 離婚届の提出先は、婚姻中の本籍地の役所か住所地の役所です。住所地の役所に提出する場合には、戸籍も提出する必要があります。

 離婚届の提出は、必ずしも離婚する夫婦の一方又は双方がしなければならないわけではなく、誰かを代理人にして提出してもらうこともできますし、郵送で提出することもできます。ただ、離婚届の訂正が必要な場合、代理人では訂正ができませんし、郵送であれば提出し直さねければならないことになります。窓口で提出する場合には、提出者の本人確認書類(マイナンバーカードや運転免許証など)の提示が求められます。

 離婚する夫婦のどちらか一方が提出することが多く、どちらが提出してもいいのですが、どちらか一方が離婚に消極的な場合には、そちらの方に提出を任せてしまうと、提出してもらえないおそれがありますので、離婚を望んでいる方が提出することにする方がよいでしょう。

 また、離婚によって婚姻中の戸籍から離れられる方が新たな戸籍を作る場合や、離婚によって相手の扶養から外れることになる場合、妻がお子さんの親権者になる場合には、離婚届の提出の際に、新たな戸籍の作成手続や健康保険などの手続、母子医療や母子手当の手続も一緒にできるので、これらの手続をする方が提出するのが便利です。

 なお、離婚届を提出する際の提出書類としては、協議離婚の場合には離婚届のみなのですが、調停離婚の場合には調停調書の謄本、判決離婚(裁判離婚)の場合には判決書の謄本と判決の確定証明書、和解離婚の場合には和解調書の謄本の提出も必要になります。

 他方、協議離婚の場合、離婚届にはご自身の署名だけでなく相手の署名と証人2名(成人であれば誰でもなれます。離婚するご夫婦の間のお子さんでもなれます。証人になっても何らかの法的義務が生じるわけではありません。)の署名が必要ですが、調停離婚や判決離婚(裁判離婚)、和解離婚の場合には、相手の署名も証人の署名も必要ありません。

※2024(令和6年)11月11日時点の情報です。後の法律改正等には対応しておりません。

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